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Audio Column No.14

ダブルバスレフのディップとEXバスレフによるディップの解消

オーディオコラム No.9 の続きです。

【共振の位相について】
バスレフ・エンクロージャーは、空気バネ(v1)とダクトのマス(m1)からなる共振系の共振を利用して、低音を増強するシステムです。空気バネとダクトのマスからなる共振系は、与えられえた振動に対して、逆の位相で共振を起こします。この共振系に振動を与えるのは、ドライバーの振動板の背面ですから、これに対して逆の位相で共振を起こすということは、振動板の前面に対しては、同相で共振しているということですので、この共振を利用することで、低音の増強ができるのです。

【ダブルバスレフの問題点】
ダブルバスレフは、第1ダクトの共振周波数(fd1Hz)付近にディップが生じます。これは、第2空気室(v2)と第2ダクト(m2)からなる共振系が、第1ダクト(m1)の振動に対して、逆相で共振することで、ディップを生じていると考えられます。第1ダクトは、振動板前面と同相で振動するので、第1ダクトにより振動を与えられた第2空気室と第2ダクトからなる共振系は、fd1Hz において、それとは逆の位相、つまり振動板前面とは逆の位相で共振を起こすのです。

シングルバスレフであれば、第1ダクトの振動は、振動板前面と同じ位相で出力されますが、ダブルバスレフでは、第1ダクトの振動が、もう一つの共振系を通すことで、位相が逆転してしまい、振動板前面の位相とは逆の位相で出力され、その帯域でディップが生じるのだと考えられます。

そして、このディップが生じる帯域は、低域に比べて、より重要な帯域である、ミッドローの帯域です。なぜ、低域よりミッドローのほうが重要かというと、人の聴覚にとって、この帯域の方が、より多くの情報を含み、その情報が持つ意味も、より強いものだからです。

周波数特性のスペックは、低域再生限界から高域再生限界までで表示されますから、ローエンドとハイエンドが気になるのは人情ですが、音楽情報としては、スペックには表示されない中域が最も重要であり、スペックに表示されるローエンドとハイエンドは最も重要ではありません。

音楽における音の重要性は、中域から遠ざかるほど低くなりますから、ダブルバスレフによって、より重要でないローエンドの伸びを得るために、より重要な帯域であるミッドローの情報が欠損することは、本末転倒な手法だと言えるとかもしれません。ローエンドの伸びが、本当に活きてくるのは、その上の帯域の、より重要な情報の欠損が無くなり、ローエンドの伸びが、本当の意味での情報の付加になったときだからです

【EXバスレフによるディップの解消】
では、どうすれば、ダブルバスレフのミッドローで生じるディップを無くすことができるのかという問題ですが、私は、第1空気室に、エンクロージャー外に開放された第3のダクトを設けることによって可能になると考えています。(右図参照)

なぜ、この第3のダクトを設けることで、ディップを解消できるのかと言うと、第1空気室と第1ダクトからなる共振系は、振動板前面と同相で共振することは、前述の通りですが、第3のダクトは、同じ第1空気室に設けられているので、fd1Hzでは、第1ダクトと同じ位相で振動します。

つまり、ダブルバスレフでは、ディップが生じる周波数において、第1ダクトの振動は、第2空気室と第2ダクトを通すことで位相が逆転して、振動板前面の位相と逆の位相で出力されますが、EXバスレフでは、第3ダクトから直接、振動板前面と同じ位相で出力されることになります。

そして、当該周波数において、EXバスレフでは、第2ダクトと第3ダクトの振動は逆相ということになるので、第2ダクトの出力が、第3ダクトの出力によって相殺され、ディップが生じなくなると考えられます (ダクト3の出力 ≧ ダクト2の出力 の場合)。

また、別の視点から考えてみると、第2空気室と第2ダクトからなる共振系が、単独で(2つの容積が合算されずに)共振を起こしているときの位相は、振動板前面の位相とは逆相ですから、この振動が第1ダクトから、第1空気室と第3ダクトからなる共振系に与えられると、この共振系によって位相が逆転し、第3ダクトから振動板前面と同相の出力が得られ、第2ダクトの出力と相殺されると考えることもできます。

Last Updated 2012-04-09



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