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Audio Column No.15

バックロードホーンらしい音とは - BLH独特のフォルマントの立ち方

穴空きダンプド・バックロードホーンの Torvi-F08 や、
デュアル・バックロードホーンの Korkea を聴いていると、
あまり、バックロードホーン(以下、BLH)らしくない音だと感じます。

最初は、何かが欠落して、BLHらしくない音になっているのではないか?
とも考えましたが、よく聴きこんでみると、
普通のBLHよりも音の見通しが良く、雑味が少なくエレガントで、
音の細かい表情も良く分かり、情報量も多いので、
何かが欠落して、BLHらしくない音になっているわけではなさそうです。

今は、BLH特有の癖が強く、BLH特有の欠点が多いほど、
BLHらしい音だと感じるのではないか?と疑っています。
BLH特有の癖というのは、ホーンの特性から周波数特性上に、
多くのピークやディップが生じることですが、これがBLH特有の音色になり、
それをBLHらしい音と感じるのではないかと考えているのです。

例えば、人の声は、基音の出方は同じでも、
フォルマント(倍音)の出方の違いによって、
違う母音や、違う個人ごとの声色の違いを認識できますし、
楽器でも、やはりフォルマントの立ち方の違いによって、
同じ音程でも、それぞれの楽器の音色の違いを認識できます。

これと同じ現象で、BLHは他の形式のスピーカーとピークやディップの出方が違うので、
BLHには、BLH独特の音色が出来るのだと考えることができます。

以前 私は、BLH特有の音色は、
トランジェント特性の良さに由来するものだと思っていたのですが、
最近は、他の形式のスピーカーには現れない、
BLHならではのピークやディップの現れ方に由来するものではないか?
と疑っているというわけです。

と言うのは、デュアルBLHでは、違う長さの2つのホーンによって、
ピークを分散し、ピークの高さを低くし、
音響迷路的動作から生じるディップを浅くしたりすることで、
周波数特性をフラットに近づけていますが、
これを聴いていると、BLHという感じがしません。

そして、穴空きダンプドBLHでは、
ホーンの途中に空けられた小穴によってディップを解消し、
開口部を狭めてホーンをダンプすることで、
ホーンロードが掛かる帯域に出来るピークを低く、特性をブロードに均し、
また、開口部を狭めることで、開口部からの中高音の漏れを減らし、
中高域にピークやディップが生じるのを抑えています。
そして、この形式も、周波数特性はフラットに近くなっていますが、
これを聴いていても、あまり、BLHという感じがしません。

さらに、デュアルBLHは、短いホーンを併設することで、
また、穴開きダンプドBLHは、開口部をダンプすることで、
ホーンロードのかかる帯域では、一般的なBLHよりも、
トランジェント特性が良くなっていると思われますが、
それにも関わらず、あまり、BLHらしい音という感じがしないのです。

つまり何が言いたいのかというと、
トランジェント特性が良くなっても、必ずしも、BLHらしい音になるわけではなく、
しかし、周波数特性がフラットに近づくと、BLHらしくない音になるということです。

これは、あくまで、私個人の経験と印象から来る仮説ですので、
もう少し研究してみないと、はっきりしたことは言えませんが、
BLHらしい音というものは、トランジェント特性の良さに由来するのではなく、
ホーンの特性によってもたらされる、周波数特性の凸凹に
由来する可能性が高いということです。

しかし、もし上記の仮説が正しければ、
BLHらしい音は、BLHの欠点(周波数特性の凸凹)に由来し、
BLH特有の欠点(癖)を減らして音を良くしていくと、BLHらしい音ではなくなるという、
私を含めたBLHファンにとっては、皮肉で逆説的な結論が導かれるかもしれません。

Last Updated 2012-04-11



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