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Audio Column No.2

バックロードホーン -その2 BLHと小口径ドライバー

前回の続きです。

この共振による低音の再生音の問題は、音の表情が乏しいことです。
モノトーンで一本調子の単調な音なのです。
共振によって低音の量は当然増えますが、
その質は共振の無い部分に比べて、大きく劣ります。

そして、その共振が強ければ強いほど、強制的に駆動すること、
つまり任意の音色で鳴らすことは困難になります。
当然、解像度も乏しくなり、それぞれの楽器の音色の違いを
描き分けることが困難になります。
どんな音色の低音楽器でも、あくまで、その共振系に固有な音色で鳴るのです。
一言で言えば過渡特性の悪い音と言うことになります。

しかしこのf0の共振は決して不必要なものではないし、必要悪ですらないと思います。
意図された性質ではないにしても、このf0共振が在るおかげで、
低域の量感が確保できているのです。
偶然の産物であるにしろ、スピーカーユニットは良くできていると思います。

では、何が問題なのかと言うと、
実は、大口径のドライバーではさほど問題ではないのですが、
小口径のドライバーでは問題になることがあるのです。
最低共振周波数(f0)がどの帯域に来るかということです。
つまり、音楽の再生において、f0が重要な帯域に来るのか、
それともそれほど重要でない帯域に来るのかが問題なのです。
重要か重要ではないかの違いは、意味の量と強さの違いですが、
これは後に述べたいと思います。

大口径のドライバーでは、低音楽器の基音部の周波数帯にf0が来るのですが、
小口径のドライバーでは、基音部よりも高い音域、
低音楽器の倍音成分の周波数帯にあたる部分にf0が来てしまうのです。
小口径ドライバーの低音域における、解像度や表情の乏しさの原因はここにあると、
私は考えています。

低音再生においては、ローエンドの伸びや量感が重要視される傾向がありますが、
むしろ、それよりも上の帯域、ミッドローの部分の表現力の豊かさや質の高さが、
音楽性の高さに大きく寄与するというのが私の意見ですが、
これについては後に述べます。

人の聴覚は、同じ音程で鳴っていても、違う楽器であれば区別することができます。
これは、それぞれの楽器が違う音色を持っているからです。
この音色の違いを描き分ける上で、大きな役割を果たすのが倍音成分なのです。
つまり、この倍音成分が再生される音域における不明瞭さは、
音色の不明瞭さとして認識されます。
音色が不明瞭ということは、
それぞれの楽器の音色の違いを描き分けるのが難しくなると言うことです。

小口径のドライバーでは、f0がそれぞれの低音楽器の音色の違いを
描き分ける音域に来るので、この部分の解像度が
相対的に大口径のドライバーに対して劣っています。
実際に聴感的にも、小口径のドライバーでは低音部において、
解像度や表情の乏しさを確認できます。
確かに低音は良く出ているけど、どんな楽器が演奏されてるのかよく判らないというのは、
この倍音域における解像度の低さに原因があると考えられるのです。

しかし、低音域での表現力を除けば、
小口径のドライバーは、大口径のドライバーより優れた部分が数多くあります。
と言うより、小口径のドライバーでなければ表現できない世界があると、私は考えています。

話を元に戻しましょう。
f0の帯域では共振によって低域の量感を得ているがゆえに、
それより周波数の高い帯域に比べて、
再生音の解像度や表現力が大幅に劣っています。
そして、小口径のドライバーでは、このf0が、
低音楽器の音色の違いを描き分ける上で重要な帯域、
低音楽器の倍音成分を再生する帯域に重なってしまうと言う問題があるのです。

では、小口径のドライバーで、質の良い低音を再生するにはどうすればよいのでしょうか?
それは、f0における共振を抑えて、
この共振に重なって埋もれている強制駆動による振動の部分を取り出して
拡大(今は便宜的に拡大と言います)すればよいのです。
そして、この働きをするのが、実はバックロードホーンなのです。

次回へ続きます。

2010-12-17


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