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Memo No.3 for Creating BLH Speakers

BLH の開き率(広がり係数)について

現代においては、バックロードホーン型エンクロージャー(以下BLH)を設計する際には、シミュレーション・プログラムを使用することによって、空気室容積、ホーン長、スロート面積、開口面積、というファクターを設定することで、どのような特性になるのかの、大体の見当をつけることができます。
しかし、実際にBLHを設計するに当っては、スロートから開口部までの間の、任意の点における断面積の計算ができなければ、ホーンの音道の設計をすることはできません。
そこで、このページでは、BLHの設計に必要な、開き率(広がり係数)と、ホーンの任意の点における、開き率を使った、断面積の求め方を説明したいと思います。


先ず、ホーンの長さを、便宜的に、10の倍数とし、
開き率を求めるのに必要なファクターを、以下のように定めます。

s = スロート面積(cm2)
m = 開口面積(cm2)
x = 開き率
l = ホーン長(cm)
n = ( l/10 ) = ステップ数

すると、開き率(x)は、次のように定義できます。

sxn = m
xn = m/s
(xn)1/n = (m/s)1/n
x = (m/s)1/n = n√(m/s)

また、y をスロートに対する開口部の倍率だとすると、
y = m/s ですので、

xn = y
x = n√y

となります。
つまり、開き率(x)を n剰すると開口倍率(y)になり、
開口倍率(y)の n剰根が開き率(x)ということです。


関数電卓を使った開き率と断面積の計算

以下に、関数電卓を使った、開き率の求め方を説明します。
関数電卓は、Windowsのアクセサリに入っているもの(下図参照)で代用できます。
関数電卓は、次の手順で開くことができます。
スタート → すべてのプログラム → アクセサリ → 電卓 → 表示 → 関数電卓

1例として、ホーンのそれぞれのファクターを次のように定め、開き率を求めてみます。
s = 50、m = 200、l = 150、n = 15

関数電卓を使った計算は、次のように入力して行います。
( m/s )^( 1/n )=
^ のボタンは、sin の右にある x^y のボタンです。

実際の値を代入して計算してみるとみると、
(200/50)^(1/15)=1.0968249796946259606814717780288
となり、開き率を求めることができます。

そして、この開き率を、スロート面積(s)に15回 掛けると、開口部面積(m)になります。
実際に計算して確かめてみましょう。
計算した開き率は、MSボタンでメモリーに記憶しておき、
MRボタンで呼び出して使うと便利です。

ステップ 断面積
0 50
1 54.84
2 60.15
3 65.97
4 72.36
5 79.37
6 87.05
7 95.48
8 104.72
9 114.86
10 125.99
11 138.19
12 151.57
13 166.24
14 182.34
15 200

このように、スロート面積(s)に開き率(x)を n回 掛けることで、開口面積(m)に等しくなります。

右上のグラフは、ステップごとの断面積をグラフにしたものですが、
エクスポネンシャル・カーブ(指数曲線)を描いているのが分かると思います。

しかし、この方法は、10cmごとの断面積しか計算できないので、長岡式BLHの設計には使えますが、
斜め音道を採用して、より正確なエクスポネンシャル・ホーンを設計する場合などにおいては、
別の方法で計算する必要があります。


より正確で実用的な計算方法

より正確な計算方法と言っても、単にステップ数を増やして精度を上げるだけなので、
基本的な計算方法は、今まで説明したことと変わりません。

例えば、l を a の倍数として、ステップ数(n)を、l/a にすれば、a (cm)ごとの断面積が計算できますし、
n=l にすれば、1cmごとの断面積が計算できます。

分かりやすい例として、n=l として説明すると、
開き率は、x = (m/s)1/n ですから、
スロートから開口部までの間の任意の点を p (整数) とすると、
p における断面積は、sxp と言うことになります。

ホーンのそれぞれのファクターを、s=50、m=200、l=150、n=150、p=135、として、
関数電卓で実際に計算してみると、開き率は、
x = (200/50)^(1/150) = 1.0092848012118741755557384622401、となり、
p における断面積は、50(x^135)≒174.11(cm2)となります。

10cmごとの断面積の求め方は、理解のための一助として説明しましたが、
実際の設計においては、n=l の方が計算しやすく、より実用的だと思います。


Last Updated 2012-12-14



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