上記のような知識が、エンクロージャー製作において、実際にどのように適用できるかについてですが、設計の段階では、知識が無くても、シミュレーションを使うことによって、ある程度の完成度を持ったエンクロージャーの設計が可能ですが、実際に製作したエンクロージャーの低域特性が思わしくない場合において、エンクロージャーの容積や
fd をどのように変化させれば、より良い特性が得られるかの見当をつけたい時に、必要になると思われます。
例えば、実際に作ったエンクロージャーが、低音不足で、fd において、4dB
音圧を増やしたいという場合は、エンクロージャーの容積を、4dBに対応する倍率で増やす必要があり、その反対に低音過剰で、fdにおいて、2dB
音圧を減らしたいと言う場合は、容積を2dBに対応する倍率で減らす必要があります。これは、fd
を変えずに、容積で低域をコントロールする場合です。
そして、より一般的な方法として、容積を変えずに、fd によって低域をコントロールする場合は、例えば、低音過剰で、fd
における音圧を 4dB を減らしたい場合は、4dB に対応する倍率を x とすると、fd を 1/√x
倍する必要があり、その反対に、低音不足で、fd における音圧を 5dB を増したい場合は、5dBに対応する倍率を x とすると、fd を
√x 倍する必要があります。
また、実際に作ったエンクロージャーが、少し低域に余裕があるので、fd を1/1.2倍することで、fd
における音圧を保ったまま、ローエンドを伸ばしたい場合などは、容積を 1.22
倍する必要がありますし、その反対に、低域が少し薄いので、fd を1.3倍することで低域特性を改善したい場合は、容積を
1/1.32 倍する必要があります。
最後に、実際にはあまりない例だと思いますが、fd を下げ、なおかつ、fd
における音圧を増したい場合に必要な容積は、x(a/b)2 倍となり、反対に、fd を上げ、なおかつ、fd
における音圧を減らしたい場合に必要な容積は、(a/b)2/x
となります。