FF85WKはFostex社による、8cmフルレンジドライバーです。
同社のフルレンジは、解像度を重視した設計なのか、ハイ上がりの物が多い印象ですが、
FF85WKは、バスレフ向けに開発されたものということで、
それほどハイ上がりという感じは無く、各音域のエネルギーバランスが良く、
音質的にも、高域にやや金属的な質感を感じることを除けば、
かなりレベルの高いものとなっています。
音色的には、紙コーンと金属製のセンターキャップの組み合わせと言うこともあり、
ややドライでクールな質感ですが、同社のFE系フルレンジに比べると落ち着いた音色で、
周波数特性的にも、比較的低域が豊かで、バランスの良さを感じます。
FF85WKのセンターキャップは、
リッジドーム形状に形成されているためか、
金属的な響きが上手く抑えられており、
派手にシャリシャリ、シャラシャラ鳴りませんが、
それでも、紙コーンやPPコーンのスピーカーを聴いていて、
FF85WKに切り替えると、やはり、金属的な質感を感じます。
特に、ボーカルものを聴いている時に、
子音が金属的に響くことが時々あるのが興醒めですが、
ボーカル以外では、音色的な違和感を感じることは少ないようです。
もともと私は個人的な経験から、振動板に金属を使うことに対して偏見があるのですが、
FF85WKを使うようになってからは、金属に対する不信感が少し和らいだようです。
その後、数ヶ月のエージングを経て、
金属臭さをほとんど感じることがない
ナチュラルサウンドになりました。
コーンもセンターキャップも、紙やPPなど同じ材質で出来ているドライバーから、
FF85WKに切り替えた時に、高域で僅かに金属的質感を感じる程度で、
これだけを聴いていれば、音色的な不自然さを感じることはないと思います。
いずれにしても、音色の問題は、エージングでかなりの部分は解消するようです。
(2012-09-22、追記)
FF85WKは、バスレフ用という触れ込みですが、
バックロードホーンとの相性も良く、私は主に、バックロードホーンで使っています。
バックロードホーンには、同社のFEシリーズという先入観がありますが、
8cmフルレンジの中では、同社のFE83Enより、Fs も Qts
も低いので、
特性的にもFE83Enより、バックロードホーンとの相性が良いと言えるかもしれません。
特に、キャンセリングマグネットを搭載することで、
磁力が強化されることの効果なのか、
重量の付加により、磁気回路の不要振動が減ることの
効果なのかは、不明ですが、低音の力感が向上し、
情報量も増え、よりクリアーなHi-Fi調の音になり、
音色的にも、よりバックロードホーンに
向いたソリッドなものになるようです。
しかし、高域の金属的な質感も、より強くなるので、
痛し痒しな感じもありますが・・・
(画像のキャンセリングマグネットのサイズは、
Φ55mmx12mm 、重さ
110g )
振動系が重いためか、FE83Enに比べると低音がよく出ますが、
FE系ほどの情報量はなく、微小信号の再生能力で劣るのは否定できません。
とは言っても、必要にして十分な情報は再生されており、
むしろFE系が細部を強調しすぎる音作りだと言えるかもしれません。
総合的に見て、このフルレンジドライバーは、周波数特性的にもバランスが良く、
金属製のセンターキャップを採用している割りには、音色的な違和感も少なく、
私の個人的な感想では、大変によく出来た素晴らしい製品だと思います。
解像度や情報量も適度なので、ソースや再生機器の粗を聴きたくない向きには、
FE83Enよりバランスが良く、リラックスして聴けるFF85WKの選択をお薦めします。
余談ですが、FF85WKはリーズナブルな価格のわりには、ルックスが良いと思います。
フレームの形も美しく、コーンの大きさとセンターキャップの大きさの比率もバランスが良く、
落ち着いた銀色に塗装されたフレームと、グレーのコーンや、
アルミのセンターキャップとの色彩的な調和も良いので、
視覚的な印象から来る満足度も高いと思います。