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DIY AUDIO SA/F80AMG

SA/F80AMG は、DIY AUDIO による、8cmフルレンジ・ドライバーです。

Tang Band のドライバーの見慣れた方は、すぐに気がつくと思いますが、
振動板、フレーム、磁気回路など、細かい点にいたるまで、
Tang Band のドライバーそのものなので、おそらく、このフルレンジドライバーは、
Tang Band がOEMで製造し、 DIY AUDIO が、自社ブランドで販売しているものだと思われます。

このドライバーの一番の特徴は、よく言われるとおり、やはり低音が豊かなことでしょうか。
8cmフルレンジドライバーとしては、 Fs が 89Hz と、かなり低いにもかかわらず、
Qts は、0.816 と非常に高く、スペックからも、低音の豊かさを容易にうかがうことができます。

おそらく、このフルレンジドライバーは、「サイズを超えた周波数レンジの広さ」というものを、
製品のコンセプトとして、与えられていると思われます。
ゆえに、その最適な使い方としては、コンパクトなエンクロージャーと組み合わせて、
その小さなサイズからは想像できない、
ワイドレンジな再生音を楽しむということになるかと思いますが、
実際に、シンプルなバスレフエンクロージャーにマウントしただけでも、
厚みのあるワイドレンジな再生音を、楽しむことができます。

しかし、このドライバーの低音は、やや緩めで、ソリッドさに欠けることから、
質感の表現においても、少しばかり、リアルさが足りないような気がしますし、
他の8cmフルレンジ・ドライバーよりも優れているとは、特に感じません。
磁気回路自体は非常に大きいので、駆動力も高そうに見えますが、
実際に聴いた感じでは、駆動力の強さは感じません。

おそらく、このドライバーの低音は、
重い振動板と強力なモーターから繰り出される、芯のある硬い低音ではなく、
中域・高域の能率を低くすることで、相対的に、低域を伸ばすと同時に、
支持系を柔らかくし、Fs を低くすることで得られるタイプの、
量感はあっても、柔らかく、質感に欠ける低音であると思われます。

低音は、絶対的な量を増やさなくても、
中域・高域の量を減らすことで、相対的に増やすことができます。
こうすることで、周波数レンジも拡大できますが、ダイナミック・レンジが狭まり、
解像度の高さや表現力の豊かさや躍動感など、失うものも当然あります。

しかし、SA/F80AMG の場合は、その能率の低さにもかかわらず、
音色的に鈍重になることはなく、コーンがマグネシウム合金製であることから、
微小信号の再生にも優れ、音の輪郭も明確ですし、明るくかっちりした音色になっています。

能率を下げることで、ワイドな周波数特性を実現しつつ、
一般的には、能率を低くすることで暗く沈んだ音色になりがちなところを、
微小信号の再生に優れた振動板を採用し、ある程度、それを回避することで、
一般的には、相反する音の要素を上手く両立させており、
音作りとしては、非常にバランスよくまとめられていると思います。

しかし、その能率の低さからも想像できるように、
中域でのダイナミックレンジが狭いように感じますし、
表現力においても、やや薄味で線の細い印象は否めません。
内部損失の小さい振動板を採用して、微小信号に対する感度を高め、
再生できる最小音のレンジを広げる方向に、ダイナミック・レンジを広げても、
やはり能率の低さから来る、淡白さからは免れえないのかもしれません。

最小音を拡大する方向でも、最大音を拡大する方向でも、
得られるダイナミックレンジは同じですが、拡大する方向によって、
当然ながら、聴感的な表現力には違いが出るようです。
そして、その違いに対する評価は、ダイナミックな音が好きか、
繊細な音が好きかによって、大きく分かれると思います。

メタルコーンの内部損失の低さから、共振が残りやすいためか、
再生音全体に、ホワイトノイズの薄いベールがかかっているような音色で、
いわゆる、S/N比の低い音かもしれません。
あらゆる音に、シリシリ、チリチリ、ヒリヒリ、した付帯音がまとわりつき、
また、高域では、共振性のピークがあり、
私としては、これがかなり気になって、音楽に入り込むことが難しく感じます。
これはもちろん、私の個人的な好みなので、このコーンの付帯音が気にならない人には、
高性能なドライバーに違いありません。

金属は内部損失が小さいことから、
コーンの材質としては、最も共振や付帯音が多くなると考えられます。
共振の出やすい高域を、フィルターでカットするウーファーでは問題が無くても、
フルレンジとしては、高域で共振性の付帯音が多くなり、
ただでさえ高域の品質に問題の生じがちなフルレンジでは、
完成度を高めるのが比較的難しい素材なのだろうと思います。

しかし、私の SA/F80AMG は、かなり昔(10年以上前)に入手したものですが、
ネットを検索すると、最近のものは、センターキャップの形が、少し違うようにも見えます。
もしかすると、これは W3-582SB が W3-582SC へ変わる過程で起きた、
センターキャップの変遷と同じようなものが、
SA/F80AMG においても、起きたのかもしれませんし、
そして、もしそうだとすれば、現行のSA/F80AMG の高域についても、
W3-582SC がそうであったように、改善されていることが期待できます。

Tang Band というメーカーは、「あれ?いつの間にモデルチェンジしたの?」という感じで、
頻繁にマイナーチェンジをするメーカーなので、
もしかすると、このドライバーも、私が知らないだけで、
すでにマイナーチェンジして、音質的にも別物になっている可能性がありますし、
ネットでのよい評判を見る限り、その可能性は高いです。

しかし、SA/F80AMG は、 8cmフルレンジとしては、結構 値が張るものなので、
私としては、型番に変化がないかぎりは、新たに購入して確かめる勇気はありません。

と言うわけで、私の持っているSA/F80AMG は、最新のバージョンではない可能性があり、
上記の評価は、レビューとしての価値が低い記事となりますので、
枯れ木も山の賑わいということで、ほんの暇つぶし、
または、参考程度ものに留めておいてください。

Last Updated 2014-03-05



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