Laulu-08は、ボーカルの再生を重視することから、
ボーカルの最低音域である80Hzまでは、十分な音圧をもって再生したいと考えています。
当然、ダクトのチューニングも、それを目標としたものになります。
ダクト径は、29mmとし、ダクト長は、18mm , 27mm , 36mm
の三種類をテストしてみました。
なお、テストに使用したドライバーは、TangBandの W3-593SG です。
以下にその特性を示します。
(S) ダクト長18mm - チューニング周波数
105Hz
(M) ダクト長27mm - チューニング周
95Hz
(L) ダクト長36mm - チューニング周波数
87Hz
この3つの低域の特性を比べてみると、
S は M
に比べて、110Hzを頂点としたピークが高い反面、90Hz以下の音圧が低く、ローエンドの伸びがありません。そして、L
は M に比べると、70Hz以下は M
より音圧が高く、ローエンドが伸びています、80Hzは M と変わらず、90Hz以上は
M よりレベルが低くなっています。
この3つのうち、低域特性が最もフラットに近く、ローエンドが伸びているのはLです。
モニター的な正確性を求めるのなら、L
を選択するのが正しいのかも知れませんが、
実際に音楽を聴いてみると、L
が一番良いとも言えないのです。
実は、人の聴覚は、低域がフラットだとフラットに聴こえないという特性があります。
と言うのは、人の聴覚は、低音に対して鈍感なので、
低域がフラットだと低音不足に聞こえるのです。
下の図をご覧ください。
これはラウドネス曲線と言って、それぞれの音量と周波数における、
人の聴覚の特性を示したものです。
例えば、80ホーンの曲線を見てみると、250Hzでは約84dB、125Hzでは約90dBです。
これは、125Hzでは90dBで、250Hzでは84dBで、人も耳には同じ80ホーンの音圧に感じるということを示しています。つまり、人の聴覚は周波数が低くなるほど、鈍感になるということです。そして、40ホーンの曲線を見てみると、250Hzでは約51dB、125Hzでは約61dBで、10dBの差があり、80ホーンの曲線の6dBの差より大きくなっています。これは音量が小さくなるほど、人の聴覚は低音に対して、より鈍感になることを示しています。
人の聴覚にはこのような特性があるので、
スピーカーの低域をフラットに伸ばした場合は、低音不足に感じるのです。
そして、低域がフラットに伸びていると感じるためには、
低域を持ち上げる必要があるということです。
特に小型スピーカーは、小音量で聴くことが多いため、大音量で聴く場合よりも、
聴覚が低音に対して
さらに鈍感になるので、より低域を持ち上げる必要があります。
話を戻しますと、
L
は周波数特性では、低域がフラットに近くローエンドも伸びていますが、
実際に音楽を聴くと、低域が痩せて厚みがなく、物足りない感じがします。
S
は元気のいい感じがしますが、低音の伸びが足りないせいか、
やや軽薄で音に深みが無く、安っぽい音に感じます。
M
は低音に適度な厚みと深みがあり、バランスの良い音に聴こえます。
何より、音楽を聴いていて、他の2つより楽しいと感じます。
以上のことから、このエンクロージャーのダクトのチューニング周波数は、
最初の設計の通り、95Hzを採用したいと思います。
Laulu-08のような小型のシステムの場合、
低音域において、低音の音圧、又は、ローエンドの伸び、どちらかが犠牲になり、
この二つを両立することは、物理的に困難です。
ですから、小型システムにおいては、いかにローエンドを伸ばすかよりも、
いかに聴感上の
低音感
を得るかに主眼を置いた設計をするほうが、
音楽を聴く道具としては、結果的に満足度の高いシステムが得られると、私は思います。