久しぶりの更新となります。
最近どうも気分が落ち込んで、作業が捗らずHPの更新も滞っていましたが、
Nuottikorva-Sが完成したのでレポートさせていただきます。
前作との違いは、ドライバーの取り付け位置が5mm上に上がったことと、
ホーンの開口面積が僅かに増えて約190cm2となったことです。
前作でもそうでしたが、このスピーカもほとんどエージング無しの状態でも
癖の無い良い音でなります。
音は、前作よりも厚みや透明感が向上しており、
前作より悪くなったところは無いようです。
前作までは試作品と言うこともあり、内部配線を半田付けしていませんでしたが、
今回はしっかり半田付けしており、それが音に良い影響を与えているようで、
かなり質・品位の違いを感じます。
開口面積を増やした効果か、ローエンドの量感も増して、
60Hz付近はかなり強い出力があり、この帯域が重要な映画音楽なども楽しく聴けます。
ボーカルも一通り聴きましたが、前作同様
癖が無く自然な音で再生されます。
しかし、このスピーカーのボーカルは素晴らしい・・・透明で繊細で自然、
聴く人を陶然とさせ
引き込むものがあります。
極論すれば、スピーカの価値は「どれだけ脳内麻薬物質を分泌させることが出来るか」
とも言えるわけで、そういう観点からしても、このスピーカーはなかなかの物だと言えます。
バックロードホーン(BLH)は、よく向き不向きがあると言われますが、
そう言われるBLHは完成度が低く癖が強いのではないかと思います。
と言うのは、Nuottikorva-Sのように癖の無いBLHで聴く限り、
ジャンルの向き不向きと言うのは特に感じないのです。
完成度の低いBLHは癖が強いので、その癖によって、
どうしても合う音楽と合わない音楽と言うのが出来てしまうのだと思います。
とは言っても、BLHの完成度を高めれば普通のスピーカーの音に近づくのかと言えばそうではなく、BLHでしか表現できない境地と言うものが残されます。
それば、トランジェント特性の良さであり、ダイナミックレンジの広さです。
この二つの特性の優秀さが必要なソースを聴くと、BLH以外のスピーカーは、
圧縮音源ならぬ圧縮再生装置なのではないかと思うくらい表現できる音の幅が違います。
スピーカーの試聴は、どうしても粗探しという感じになってしまいますが、
今回も小型スピーカーの苦手とするfレンジ・ダイナミックレンジ共に広い映画音楽
「タイタニック」のサウンドトラック"BACK
TO TITANIC"をじっくり聴いてみました。
先ずは1曲目の"TITANIC
SUITE"の聴きどころ、6分あたりからのパートはローエンドの厚みが増した恩恵で「エレガントな鉄塊の重厚なる疾走感」が楽しめます。
適度な厚みがあり全域にわたって雑味がなくクリアーな再生音は、
このエンクロージャーの設計思想の成功を、控えめに言っても、その方向性が間違っていないことを示唆しているようです。
そして、スピーカーチェック用のソースとしては、
このサウンドトラックの白眉ともいえる6曲目の"A BUILDING
PANIC"、
この曲は静かな曲調からドンッ!バンッ!!と爆発的に大音量で立ち上がる部分が連続するので、小型スピーカーには厳しいソースですが、
Nuottikorva-Sでは、これぞBLHと言える特徴が存分に発揮され、爆発的な音の変化にも軽々と追従し「神聖なる破壊・荘厳なる恐怖」が遺憾なく再生されます。この鬼気迫る表現はダイナミックレンジが狭く芯の無いフニャフニャの低音では再現できないもの。
しかしこの曲を聴くと、このスピーカーの視覚的印象と再生音の違和感が凄く、
この小さな8cmドライバーの再生音としては望外のものです。
やはり、ショートホーンは良い。
瞬時に立ち上がるハイスピードな低音、ゴリッとしたソリッドな低音の質感、
駆動できる空気の多さがもたらす浪々としたスケール感、
そのスケール感の大きさが喚起するある種の偉大さを感じさせるもの・・・
そして、この映画のテーマ曲である11曲目のCeline Dionの"MY HEART WILL GO
ON"
彼女のボーカルの再生は、まさにBLHの面目躍如たるものがあります。
透明でありながら圧倒的な声量と伸びを併せ持つ彼女のボーカルの再生音は、
BLH以外のスピーカーの再生音とは一線を隔するもので、
このスピーカーの超軽量振動板からもたらされるダイナミックレンジの広さと
トランジェント特性の良さが十分に活かされており、
ささやくように静かに歌う部分、ありったけの声を張り上げて歌う部分、
そのどちらもリアルに再生され、情感の表現が豊かで表現の幅が広いのです。
特に"You're here there's nothing I
fear"から始まるのサビの部分を聴いて感じる、
鍛え抜かれた声帯を持つ歌手の歌声が放つ「凄み」や「壮絶さ」は、広いダイナミックレンジをもつスピーカーでしか聴くことの出来ない
ある種の異質な表現領域かもしれません。
そして、それはダイナミックレンジの狭いスピーカーの「のっぺりした音」では到達することは叶わないBLHらしい表現の高みと言えるのではないでしょうか。
スピーカーは人の声の再生が最も大切だと私は考えていますが、
その意味からも、このスピーカーのボーカルは自然で癖が無く、
安心して聴くことのできる品位、そして
BLHらしいエネルギー感とダイナミズムを持っています。
Nuottikorva-Sの紹介ページへ