Torvi-C08は、テスト機のつもりで開発したのですが、癖が少なく素直な音質が気に入ったので、
もう1台作ってペアにしてみました。ホーンの開口部は左右対称になっています。
下の画像は内部の様子です。
ホーンの気流の流れをスムーズにし、歪みや定在波や癖を減らすために、
最終コーナーにも整流版を配置したので、全てのコーナーに三角材や整流板が配置されています。
空気室だけではなく、ホーン内にも結構な量の吸音材が使用されています。
Torvi-C08のようにホーンが短く90度の折り返しが多いバックロードホーンは、
ホーン開口部からの中・高音の漏れが多いので、
ホーン内である程度
吸音し、ホーン開口部からの中・高音の漏れを減らすことで、
中・高音域で、ドライバーの音とホーンの音との干渉が減り、
雑味や濁りの少ない再生音が期待できます。
そして、Torvi-C08のような直管ホーンでは、ホーン内に吸音材を使用することで、
よりスムーズにホーンを広げられるというメリットもあります。
最近、私は「バックロードホーンらしくないバックロードホーン」というものに興味があり、
音をおとなしくするために、やたらと吸音材を使っています。
以前より、シャープな音があまり好きではなくなってきているようです。
特に、中・高域では、あまりバックロードホーンらしさは必要ないかもしれないと感じています。
中域・高域が余りに高解像度で鮮烈だと、
ほとんどの圧縮音源は聞くに堪えない音になってしまいます。
特にボーカル物は、192kbpsでも駄目、320kbpsで何とか・・・という感じですし、
音に不自然さを感じずに聴いていられるのは、CDの原音だけ、という状況になります。
そして、CD音源であっても、1枚のアルバムを聴き終わる前に、
耳が疲れてしまうような、シャープで鮮烈すぎる音のスピーカーは、
音楽を聴く道具としてはいかがなものか?とも思うわけです。
では、バックロードホーンの存在価値は何かというと、
やはり、ダイナミックレンジの広さと、中低域(ミッドロー)のリアルな質感でしょうか。
ダイナミックレンジの広いソースを、バックロードホーンで聴いたときの
「音が吹っ飛んでくる感じ」は、バスレフや密閉では出せません。
バックロードホーンで聴くと鬼気迫る演奏も、バスレフで聴くと、
違う録音ではないのかと思うくらい、何てことのない平坦な曲になってしまいます。
バスレフや密閉型だと、ダイナミックレンジが狭まってしまうのです。
そして、例えば、目隠しをした人に、バックロードホーンでチェロの演奏を聴かせると、
生演奏だと勘違いする人がいるかもしれませんが、
バスレフの音を生演奏だと勘違いする人は、多分いないだろうと思います。
軽量振動板とホーンでしか出せない、リアルな中低域の質感というものがあるのだと思います。
下のグラフは、最終的なTorvi-C08の周波数特性です。
測定に使用したドライバーは、Fostex FF85WK
です。
そして、次のグラフは、Torvi-C08の特徴である小穴を閉じた場合の周波数特性です。
周波数特性は、スピーカーの位置やマイクの位置を少し動かしただけで変わってしまうので、
参考程度にしかなりませんが、上記の二つのグラフは、
スピーカーの位置とマイクの位置は同じで、測定上の違いは小穴の開閉だけなので、
ホーンの途中に空けられた、この小穴の効果によって、
低域の(190Hz辺りの)ディップが無くなっている事が判ります。
周波数特性のグラフからは、やや低域が控えめな印象を受けますが、
これは、ホーンの開口部が側面にあるので、マイクの指向性の問題で、
測定上は、低域が少なくっているような気がします。
実際に聴いた感じでは、もっと低域に厚みがある印象を受けます。
この小穴からは、しっかりとホーンロードが掛かっている低音が出力されるようで、
普通の直管バックロードホーンよりも、低音がソリッドで、かつ、厚みや密度感があり
斜め(コニカル)音道のバックロードホーンのような、
ハイスピードにスバッと切り込んでくる感じも、加味されているようです。
中・高域は、吸音材の使用により、少しおとなしくなっていますが、
低域は小穴の効果により、かえって、バックロードホーンらしさが増しているようです。
ローエンドも45Hz辺りまで伸びており、部屋の壁やコーナーに寄せて設置すると、
低域の量感やスケール感が一段と増すので、クラシック音楽などにも好適だと感じます。