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Psat Project Torvi-C08

HBLH (Holed Back Loaded Horn) Torvi-C08 の開発コンセプトなど
2012-01-14

Torvi-Cは、コラムNo.13 に書いた、バックロードホーンにおける低域でのディップを解消する方法を設計に取り入れ、左右対称のデザインとして具現化したバックロードホーンです。

ディップを解消する原理はコラムNo.13書いたとおりですが、簡単に説明すれば、ホーンの開口部からドライバーの振動板とは逆相の音が出力されることで、低域にディップが生じる周波数において、ホーンの途中に空けられた小さな穴から、当該周波数で同相の音を取り出すことによって、当該周波数におけるディップを解消することを意図しています。

このディップを解消することによって得られる効果ですが、
主に、次の3つのことが考えられるのではないかと思います。
(d1 Hz から d2 Hz までの帯域にディップが発生していたと仮定します)

  1. d1 Hz から d2 Hz までの情報の欠損が無くなる。
  2. d1 Hz から d2 Hz までの帯域に倍音を持つ楽器の音色の違いを
    描き分ける能力が高まる。
  3. d1 Hz から d2 Hz までの帯域に倍音を持つ基音が再生できなくても、
    再生されているように感じる。

効果1.について:もともと再生されていなかった帯域が再生されるようになるので、
その帯域の情報の欠損がなくなるということです。

効果2.について:人の聴覚は、同じ音程の音でも、違う楽器であれば違う音として認識できます。
これは、基音が同じ(音程が同じ)であっても、含まれる倍音成分が違うので、違う音色として認識できるのです。つまり、ある帯域にディップがあると、その帯域に倍音成分を持つ同じ音程の音の音色の違いが不明確になるので、ディップが無くなれば、当然 音色を描き分ける能力が高まります。

効果3.について:人間の聴覚は、基音が聞こえていなくても、その基音の倍音が聞こえていれば、その基音も聴こえているように感じます。例えば、30Hzの音が再生できなくても、30Hzの倍音である、60Hz 90Hz 120Hz 150Hz 180Hz ・・・ の音が再生されていれば、30Hzの音が再生できているように感じます。実際に、サイン波の30Hzは聴こえなくても、ノコギリ波や矩形波であれば、30Hzでも聴こえるはずです。これは、30Hzの音が実際に出力されているわけではなく、その倍音が聞こえることで、30Hzの音が聞こえるように感じるのです。サイン波には倍音成分は含まれていませんが、ノコギリ波や矩形波には倍音成分が含まれおり、その倍音成分を聴くことで基音が聞こえるように感じるからです。ラジカセでもコントラバスの演奏が聴けるのは、コントラバスの基音が再生されていなくても、倍音が再生されていれば基音の音程が判るからです。

上記のことから、スピーカーの周波数特性において、ある帯域にディップが生じると、
その帯域での情報の欠損はもちろん、
その帯域に倍音を持つ楽器の音色を描写する能力と、
その帯域を倍音とする基音の再生(実際には再生されていなくても)
に制限が加えられ、ディップが発生する帯域以外にも影響が及ぶと考えられます。

そして、ディップを解消することで、前述の欠点の改善、
つまり、情報量の増加、表現力の向上、聴感上のローエンドの拡大、
が期待できるのではないかと考えています。

上の画像は、音道の様子です。
このサイトやブログの更新を怠っている間に色々と調節していたので、音道のところどころに吸音材が貼っていますし、コーナーにも三角材を入れています。

定説では、吸音材は使えば使うほど、低音が少なくなり、情報量も少なくなると言われていますが、実験と試聴を繰り返したところでは、場合によっては、吸音材の使用によって、低音と情報量が増えることがあるのではないかと、感じはじめています。もちろん、絶対的な量ではなく、相対的な量ですが。このことについては、そのうちコラムにまとめようと思います。


Torvi-C08 の周波数特性など
2012-02-15

Torvi-C08は、テスト機のつもりで開発したのですが、癖が少なく素直な音質が気に入ったので、
もう1台作ってペアにしてみました。ホーンの開口部は左右対称になっています。

下の画像は内部の様子です。
ホーンの気流の流れをスムーズにし、歪みや定在波や癖を減らすために、
最終コーナーにも整流版を配置したので、全てのコーナーに三角材や整流板が配置されています。

空気室だけではなく、ホーン内にも結構な量の吸音材が使用されています。
Torvi-C08のようにホーンが短く90度の折り返しが多いバックロードホーンは、
ホーン開口部からの中・高音の漏れが多いので、
ホーン内である程度 吸音し、ホーン開口部からの中・高音の漏れを減らすことで、
中・高音域で、ドライバーの音とホーンの音との干渉が減り、
雑味や濁りの少ない再生音が期待できます。
そして、Torvi-C08のような直管ホーンでは、ホーン内に吸音材を使用することで、
よりスムーズにホーンを広げられるというメリットもあります。

最近、私は「バックロードホーンらしくないバックロードホーン」というものに興味があり、
音をおとなしくするために、やたらと吸音材を使っています。
以前より、シャープな音があまり好きではなくなってきているようです。
特に、中・高域では、あまりバックロードホーンらしさは必要ないかもしれないと感じています。

中域・高域が余りに高解像度で鮮烈だと、
ほとんどの圧縮音源は聞くに堪えない音になってしまいます。
特にボーカル物は、192kbpsでも駄目、320kbpsで何とか・・・という感じですし、
音に不自然さを感じずに聴いていられるのは、CDの原音だけ、という状況になります。
そして、CD音源であっても、1枚のアルバムを聴き終わる前に、
耳が疲れてしまうような、シャープで鮮烈すぎる音のスピーカーは、
音楽を聴く道具としてはいかがなものか?とも思うわけです。

では、バックロードホーンの存在価値は何かというと、
やはり、ダイナミックレンジの広さと、中低域(ミッドロー)のリアルな質感でしょうか。
ダイナミックレンジの広いソースを、バックロードホーンで聴いたときの
「音が吹っ飛んでくる感じ」は、バスレフや密閉では出せません。
バックロードホーンで聴くと鬼気迫る演奏も、バスレフで聴くと、
違う録音ではないのかと思うくらい、何てことのない平坦な曲になってしまいます。
バスレフや密閉型だと、ダイナミックレンジが狭まってしまうのです。
そして、例えば、目隠しをした人に、バックロードホーンでチェロの演奏を聴かせると、
生演奏だと勘違いする人がいるかもしれませんが、
バスレフの音を生演奏だと勘違いする人は、多分いないだろうと思います。
軽量振動板とホーンでしか出せない、リアルな中低域の質感というものがあるのだと思います。

下のグラフは、最終的なTorvi-C08の周波数特性です。
測定に使用したドライバーは、Fostex FF85WK です。

そして、次のグラフは、Torvi-C08の特徴である小穴を閉じた場合の周波数特性です。

周波数特性は、スピーカーの位置やマイクの位置を少し動かしただけで変わってしまうので、
参考程度にしかなりませんが、上記の二つのグラフは、
スピーカーの位置とマイクの位置は同じで、測定上の違いは小穴の開閉だけなので、
ホーンの途中に空けられた、この小穴の効果によって、
低域の(190Hz辺りの)ディップが無くなっている事が判ります。

周波数特性のグラフからは、やや低域が控えめな印象を受けますが、
これは、ホーンの開口部が側面にあるので、マイクの指向性の問題で、
測定上は、低域が少なくっているような気がします。
実際に聴いた感じでは、もっと低域に厚みがある印象を受けます。

この小穴からは、しっかりとホーンロードが掛かっている低音が出力されるようで、
普通の直管バックロードホーンよりも、低音がソリッドで、かつ、厚みや密度感があり
斜め(コニカル)音道のバックロードホーンのような、
ハイスピードにスバッと切り込んでくる感じも、加味されているようです。
中・高域は、吸音材の使用により、少しおとなしくなっていますが、
低域は小穴の効果により、かえって、バックロードホーンらしさが増しているようです。
ローエンドも45Hz辺りまで伸びており、部屋の壁やコーナーに寄せて設置すると、
低域の量感やスケール感が一段と増すので、クラシック音楽などにも好適だと感じます。

Last Updated 2012-02-15



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