Torvi-Rは、前回開発したNuottikorva-Sと同じく、8cmフルレンジドライバー用のコンパクトなバックロードホーンです。
Nuottikorva-Sは音の良さの追求のため、設置性がやや犠牲になる問題があったので、今回開発するTorvi-Rは、成功したNuottikorva-Sの設計思想を引き継ぐとともに、設置のしやすさにも配慮した設計にしました、。また、自作派の方にも楽しんでいただけるように、制作が容易な直管構成のバックロードホーンとしています。
Nuottikorva-Sは壁に近づけると低音の量感やスケールが増すしますが、その反面やや音像が膨らむきらいがありました。それは壁に近づけるとドライバーと壁の距離が近づきすぎるために、壁からの反射が増え音がにじむからだと思います。
Torvi-Rはバッフル面積が小さく奥行きがあるので、壁に近づけてもドライバーと壁との距離をある程度確保でき、音像が拡大せずシャープな音像が期待できます。
そしてTorvi-Rは背面開口タイプですので、壁に近づけることで擬似的にホーンの延長と開口面積の拡大ができ、コンパクトながらスケールの大きな再生音も期待できます。
音道の構成は直管ホーンながら癖が少なく制作が容易なNuottikorva-Sの最初の試作品バージョンの設計を引き継いだものです。ホーンのカーブは癖が少なく効率のよい90度のカーブを多用し、180度のカーブは2箇所にとどめました(Nuottikorva-Sは1箇所)。Nuottikorva-Sの癖の無い音が気に入っているので、ホーンの取り回しは違いますが、ホーンの設計が極力近くなるように配慮しています。
管は7本、設計にもよりますが、管の本数が多いと、ホーンとしての本来の動作が強くなり、共鳴管的な動作が少なくなります。そして、中低音の癖が減少するとともに解像度が高くなります。スロートに近い管は短く開口部に近くなるにしたがい管は長くなります。これはホーンの中低域の再生を担う音道部分を短い間隔できめ細かく広げることで、ホーンの効率を上げ共鳴や癖を減らす狙いもあります。
空気室の直後に長い直管が来ると必然的にバスレフ共鳴や気柱共鳴が発生します。これは低域に量感をもたらしますが、それと引き換えに低域のクオリティーを失わせます。これらの共鳴の発生する帯域では音の解像度が低下し、音色も単調になり、ホーンのハイスピードで解像度の高いゴリゴリとした音とは聴感上はっきりと判別されるものです。
しかしこれらの共鳴音が、人間の聴覚が鈍感な低域で発生する場合は、むしろ音楽性を増す場合もあるので一概に「共鳴音=悪」であるとは言えず、結局のところ、実際に作って鳴らしてみるまでは判断できません。しかし、いずれにしても聴覚が比較的敏感な中低域以上の帯域で共鳴音が発生するのは問題です。低音の解像度や楽器の質感の表現において重要な帯域である中低音での共鳴音は、表現力と言う観点からは明らかな後退であると考えられるからです。
空気室の体積は1,535cc、ホーン長は約128cm、スロート面積24cm2、開口面積127.2cm2。空気室がやや大きいのでは?と感じるかもしれませんが、
FE83Enはf0もQ0も高いので空気室が小さいと中低域に強い癖が出る恐れがあり、
Nuottikorva-Sの経験からも、さらにもう少し大きくする設計もありかなと感じています。このようなデータは、そのうち表にまとめようと思います。
ホーンは、ローエンドの伸びよりも聴感上量感を感じる帯域の充実を狙った設計です。数字上の特性の良さよりも、実際に音楽を聴いて楽しいと感じるように設計することが大切だと、私は思います。しかし、聴感の特性や音の好みは人によって違うので、これが絶対と言うことはもちろんありませんが。
先ずは各コーナーの三角材や整流板無しの状態で色々なソースを視聴をしてみて、どの程度のクオリティーがあるか判断してみたいと思います。