上の画像は、マイナーチェンジを施して完成した、Uzu-10 シリーズの第3代目、Uzu-10III
です。
高さは45cm、幅はUzu-10II より7mm広がって 36cm となり、
幅と高さの比率は一応、4:5
と、切りの良い数字になっています。
このドライバーの取り付け位置には、
フロントバッフルのエッジでの音の回折の影響で生じる、
周波数特性上の乱れを分散するという意図があります。
これは、左端から13.5cm、上端から18cm、右端から22.5cm、下端から27cm、という位置ですが、
ドライバーの中心から、フロントバッフルのそれぞれの端までの距離は、
13.5+4.5=18
, 18+4.5=22.5 , 22.5+4.5=27 , 27/2=13.5
というふうに、
一定の規則性を持った数字になっています。
上の画像は、Uzu-10III の内部の様子です。
音道を蛇行させた部分が2箇所ありますが、これは、ホーン長を僅かに延長するとともに、
ホーンの広がり方を、よりなだらかにするための工夫です。
Uzu-10II からの一番の変更点は、空気室の拡大です。
容積にして、8%
程度の違いでしかありませんが、
聴感上は、中域・高域がより伸びやかになり、
ホーンの効き方がマイルドで、聴き疲れのしない音になっていると感じます。
ホーンの効き方を強くしたい場合は、ウッドブロックなどを入れて、
空気室の容積を減らすことで対応できるので、
最初の設計では、空気室を少し大きめにしておいた方が、
調節の自由度が増して良いだろうと思われます。
下のグラフは、Uzu-10 III の軸上1mでの周波数特性です。
測定に使用した10cmフルレンジ・ドライバーは、Tang
Band W4-930SG です。
僅かに、ハイ上がり傾向が見て取れますが、BLH
としては比較的フラットで、
また、そのサイズから考えれば、非常にワイドな周波数特性だと言えます。
ちなみに、Uzu-10 及び Uzu-10II の周波数特性と、Uzu-10III
の周波数特性との比較は、
測定に使用しているドライバーと、測定環境にも違いがあるため、あまり意味がありません。
リスニングルームの状態を、常に一定に保つのは不可能ですし、
床にしるしを付けておくわけにもいかず、
スピーカーの位置や向き、マイクの位置なども、
測定のたびに、毎回
同じにはできないので、
同一条件での測定は、実質的に不可能だからです。
Uzu-10III の周波数特性を細かく見てみると、170Hz にディップがありますが、
このディップは、普通のBLH
では原理的に生じるものです。
Uzu-10III は、BLH
としては最も基本的な構造で、
ディップを解消するための、特別な仕組みを有していないことから、
この帯域にディップが生じるのは、仕方のないことではありますが、
サインスイープでは少し薄いかなと感じる程度ですし、
実際の音楽鑑賞でも、情報の欠損を感じる程のものではありません。
ホーンの開口部から放射される低音は、あらゆる方向に広がるので、
直接リスナーに向かってくる成分以外にも、壁に反射してから耳に届く成分など、
時間差と位相差を伴って耳に届く成分の割合も、比較的大きくなります。
その様な間接音の影響から、実際の音楽鑑賞では、
周波数特性で見るような、はっきりとしたディップを感じないのかもしれません。
特に、Uzu-10III
のような、側面開口型のBLH は、
前面開口型BLH
などに比べると、間接音の割合がより大きくなるので、
聴感上は、ディップを感じにくいのかもしれません。
200Hzに幅の狭いピークが生じています。
これは部屋の定在波の影響ではなく、実際に生じているもののようですが、
ピークの幅が狭いため、実際の音楽鑑賞において、問題となることは少ないようです。
低域特性は、このサイズのBLH としては非常に優秀で、
43Hz
辺りまではフラット、低域再生限界(ローエンド)は、30Hz辺りです。
43Hz-100Hz 辺りがフラットなのは、このサイズではありえないと感じるかもしれませんが、
ホーン長が比較的
短めのスパイラルBLH は、TQWT として機能する場合に、
ホーンの連続性の高さから、TQWT
としても機能しやすいため、
この帯域での出力が、大きくなる傾向があるのではないかと考えられます。
高域再生限界(ハイエンド)は、使用するドライバーの性能に依存しますが、
W4-930SG では、きっちり20kHz
まで伸びています。
そして、W4-930SG を採用した場合の、 Uzu-10III の実用的な周波数特性は、
40Hz-19kHz
といった感じで、 10cmフルレンジ1発のシステムとしては、
かなり広大な特性となっています。
中域は目立ったピークもディップもなく、極めてフラットで、
ほぼ一直線という感じの、申し分のない特性になっています。
私が最近作るBLH には、音道のコーナーに少量の吸音材を使っています。
この技術 (SAC) は、比較的
高い帯域で生じるホーン鳴きや、中・高域での雑味、洞穴感など、
BLH
で生じがちな欠点を、かなり解消してくれるようです。
そして、Uzu-10III
の中域の極端な平坦さは、この技術の恩恵かもしれません。
実際の試聴でも、Uzu-10、及び、Uzu-10II
では、
特性のソースで、「ホーホー」という、ホーン鳴きが感じられましたが、
Uzu-10III
では、同じソースでも、このホーン鳴きが感じられません。
そして、ホーンロードの掛かる帯域と、掛からない帯域の音色の違いから生じる、
ボーカル帯域の音色の変化や揺らぎ感も減少しており、
癖の少なさという点では、確実に改善し、
システムとしての完成度はより高まっています。
BLH
らしい音の煩さも減少して、より聴き飽きの来ない音になっていますし、
中域・高域では、雑味が減少し、よりクリアーでエレガントな音になり、
音自体のクオリティーは、確実に向上していると思います。
Uzu-10II と同じく、Uzu-10III についても、設計図
を公開していますので、
興味のある方は、試してみてはいかがでしょうか。