■ 1.エンクロージャー容積を変えた場合
では、V=6 / L=9 /
R=2.5 の条件を基準として、
ファクターのうち、ポート長(L)を変えると、どのように特性が変化するのかみて見ましょう。
V=6 / L= 9 / R=2.5
i1=48 /
i2=129 / I=2.69
V=9 / L= 9 / R=2.5
i1=46 /
i2=113 / I=2.46
V=4 / L= 9 / R=2.5
i1=51 /
i2=151 / I=2.96
上のグラフから、ダクトが同一のとき、エンクロージャーの容積が大きくなると、I
は小さくなり、エンクロージャーの容積が小さくなると、I
は大きくなることが判ります。このことから、容積は少ないほうがバスレフ共鳴による低音の質感は良くなると考えられます。
そして、ポートの共鳴管としての動作は、容積の違いによって、ピークの立つ周波数に変化はありませんが、容積が大きいほど、ピークの高さが低くなっています。これは、容積が大きいほど、空気バネが柔らかくなるので、ポートに対するハイカットフィルターとしての機能が大きくなることが原因だと思います。このことから、容積が大きいほど中高域での付帯音が減り、癖の少ない音になると考えられます。
■ 2.ポート長を変えた場合
では、V=6 / L=9 /
R=2.5 の条件を基準として、
ファクターのうち、ポート長(L)を変えると、どのように特性が変化するのでしょうか?
V=6 / L= 9 / R=2.5
i1=48 /
i2=129 / I=2.69
V=6 / L= 14 / R=2.5
i1=43 /
i2=125 / I=2.90
V=6 / L= 6 / R=2.5
i1=51 /
i2=132 / I=2.58
上のグラフから、ポートを長くすると、I は大きくなり、ポートを短くすると、I
は小さくなることが判ります。このことから、ポートを長くした方が、バスレフ共鳴での低音の質感は良くなるだろうと考えられます。
しかし、ポートの共鳴管としての動作は、ポートが長くなるほど、基音の周波数が低くなるので、エンクロージャーのハイカットフィルターとしての働きも弱まり、ピークは高くなります。そして、ピークの数も増えています。特にL=14の場合、聴覚の敏感なボーカル帯域に、大きなピークが現れており、周波数特性にも乱れが見られます。このことから、ポートが長いほど、中高域で、いわゆる筒臭い付帯音が多くなり、癖のある音になると考えられます。
■ 3.ポート開口半径を変えた場合
最後に、V=6 / L=9 /
R=2.5 の条件を基準として、
ファクターのうち、ポートの開口半径(R)を変えると、どのように特性が変化するか見てみましょう。
V=6 / L= 9 / R=2.5
i1=48 /
i2=129 / I=2.69
V=6 / L= 9 / R=3.5
i1=57 /
i2=141 / I=2.46
V=6 / L= 6 / R=1.8
i1=40 /
i2=121 / I=3.03
上のグラフを観察すると、開口半径が小さいものほど I が大きく、開口半径が大きいものほど I
が小さくなっています。このことから、開口半径が小さいものほど、バスレフ共鳴による低音の質感は良くなるだろうと考えられます。
ポートの共鳴管動作としては、ポート長+開口半径x0.6x2
が、実質的な共鳴管の長さになるので、開口半径の小さなものほど、ピークが現れる周波数が高くなり、ピークの数も少なくなっています。さらには、開口半径が小さくなると、共鳴管としてのサイズも小さくなるので、共鳴音の音圧が減り、ピークの高さも低くなっています。このことから、ポートの開口面積は小さいほど、中高域での付帯音が減り、筒臭さの少ない、高品位な音になるだろうと考えられます。
そして、注目すべきことは、他の2つのファクター(容積
とポート長)では、バスレフ動作による低音の質感を良くすると、ポートの共鳴管としての動作による付帯音が増えるという、相反する関係にありましたが、開口半径というファクターでは、それが相反した関係ではなく、開口半径を小さくすることで、低音の質感を改善し、同時に、中高音の付帯音も減らせるということです。
そして下のグラフは、そのような点を考慮して設計した場合の特性です
V=6 / L=3.6 /
R=1.8
i1=49 / i2=129 /
I=2.63
ポートの開口面積が小さくても、良好な低域特性が得られています。ポートが小さいので、付帯音の出力も低く、ドライバーの出力に対して、-34dB程度に抑えられています。これは音楽信号の音圧に対して、2%程度の音圧しかなく、しかもボーカル帯域にはピークが無いので、付帯音が気になることは、ほとんどないと思います。
しかし、バスレフシステムの常識では、ポートの開口面積を大きくすると、背圧が減り、ポートからの出力も増えるとされており、このことから、バスレフシステムの自作では、ポート開口面積を大きくした設計が多く見られます。しかしこのような設計だと、ポートのサイズが大きくなるため、中高域でポートの共鳴管動作による付帯音が多くなるので、いわゆる筒っぽい音になります。また、ポートの開口面積が大きいと、エンクロージャー内からの音漏れも多くなり、最も重要な中音域の質が低くなるため、システムとしての完成度を高めることが、比較的難しくなる可能性があります。
そして下のグラフは、その様な常識に従い、比較的欲張った設計にした場合の特性です。
V=9 / L=12 /
R=3.5
i1=51 / i2=119 /
I=2.33
容積を大きくしたので、低域で高い音圧が得られていますが、ポートも大きいので付帯音の音圧も高く、ドライバーの音圧に対して、-16dB程度の出力があります。これは、音楽信号の音圧に対して、最大15.8%程度の付帯音が、聴覚の敏感なボーカル帯域において出力されるので、中高域でかなり筒臭い音になる可能性があります。